掬水月在手 弄花香満衣
水を掬(きく)すれば月、手に在り
花を弄すれば香(か)、衣(え)に満つ 〔全唐詩〕
ー 心に吹く風 ー
唐の詩人、于良史(うりょうし)の詩「春山夜月」の中の1句です。
春の朧月は風情があるが、月は矢張り秋が佳い。
手で水を掬えば、そこに月が映る。そして、花を手折れば着物に香が移る。
遠くの月を掌の中に受け取ることもできるし、形のない香りを持ち帰ることもできるでしょう。
彼岸を過ぎ、季節はすっかり秋。
確かに、木々の色も、雲の形も変わり、風は涼しいというより冷たく感じる。
しかし、忙しい毎日の中では、季節のこの移り変わりに気付くことは少ない。
大半の日本人は、空の月を眺めることさえ、あまり無いよう。
われわれは余裕がなくなってしまったのでしょうか。
ともあれ、月が輝き、花が香り、木々が紅葉し、
穏やかに風が流れる別天地を、
心の中に持っているのは楽しいものです。